それから数日後、近藤さん率いる壬生浪士組の一部は大阪へ向かった。

僕は出発する彼等を笑顔で見送り、完全に姿が見えなくなると屯所の中へ戻った。


居残り組は僕や山南さん、それと何人かの隊士達。 


まぁ、人数が減るだけでやることはいつもとそう変わらない。

洗濯物とか作るご飯の量が減るから負担が少ないくらいか。


そういう訳で、いつもより早く家事を終えてしまった。

どうにか退屈を紛らわすために庭に出て紫陽花を愛でていたら、山南さんが縁側から声をかけてきた。


「アキさん、今、時間はありますか?」


珍しく、山南さんから話し掛けて貰えた。

たとえ、それが“好意”ではなかったとしても話し相手が出来るのは嬉しい。

僕は笑顔で首を縦に振る。


『有り余ってます!』


それから間もなく、僕は山南さんと並んで縁側に腰を掛け、雑談を始めた。


「毎日家事は大変ではありませんか?」

『うーん、まぁ、大変ですけど。
 楽しいですよ』

「…凄いですね、アキさんは」

『いえいえ』


儚げな笑みは時々心配になるけれど、山南さんはやはり優しく気品がある。

山南さんって、確か腕を負傷して剣を使えないんだっけ?  

凄く頭が切れるから壬生浪士組の頭脳とも言われている山南さん。

彼は、誰よりも冷静なんだけれど、誰よりも壬生浪士組の皆を大事にしている。

なんて、これは僕の未来視と見解の結果だけど。


頭の良い山南さんのことだから、僕の何かに勘づいているのかもしれない。

それ故に、この会話はきっと仲良くなるためとかではなくて。


「…アキさんは、何者なのですか?」


僕への“尋問”が目的だ。