「えー、無欲すぎません?
 まぁ、健気で可愛いですけどボソッ」


ソウ君の呟きは聞いていなかった。


「おいテメェら、副長の俺を無視するとは
 良い度胸してんな?」


黒い笑みを浮かべて、僕とソウ君を見てくるトシくん。

怖くはないけど、面倒臭いなと思う。

トシくん、怒るとネチネチ言う性格だから。


「だって、土方さん長々と話し過ぎですよ。
 要点は絞って話さなきゃ。

 それに、暫くここを離れる分僕もアキさんと話したいですし」


ソウ君はムギューと僕に抱きついて、トシくんを非難した。

いつも思うけれど、ソウ君は僕とだけ無駄に距離が近い。

他の人には “氷かな?”ってくらい冷たいのに。

人との関わりの上では平等性は大事だよ、ソウ君。

ていうか…。


『うっ、苦しい…』


ソウ君は背が高いから、僕の首に腕が回ってて締まってるんだよ。

せめて、お腹か腰にしてほしい。

ソウ君は中々の美声を僕の耳元で放つ。


「僕のこと、忘れないでくださいね」


いやいや、今生の別れじゃあるまいし。


『気を付けて行ってきてね!』


意味のわからない言葉は無視して、いつもの笑顔と共に無難な言葉を送った。


「(可愛い…っ!)」

『…ぅ、ぐ!?』


その直後、(僕を殺す勢いで)抱きしめる力を強くしたソウ君は、直ぐ様トシくんに引っ剥がされた。


酸欠で危うく意識を失うところだった僕はソウ君に“抱きつき禁止令”を言い渡した。