「近くに美味しい甘味処があるんですが、アキさん甘い物は好きですか?」


話を振られた為、桜から目を離してソウ君を見やる。

ソウ君は微笑を浮かべながら僕を見ていた。


甘味かぁ、あまり最近は食べてなかったけど。

ソウ君は、甘い物すきだもんね。


『甘味?食べれるよ?』


甘味は食べ物だし。

食欲が湧かない質の僕は、好き嫌いの概念がはっきりしていない。


無意識に若干逸れた解答をしている僕に、ソウ君は苦笑していた。


「一君も食べる?」

「あぁ」


甘味処へ移動すると、ソウ君は早速注文した。


「みたらし団子十本と餡蜜五皿下さい」


珍しく人のいい笑顔で言っているけど。


『…えっ??』


は?今の、聞き間違い?

あり得ない数に僕は石化した。


団子十本に餡蜜五皿っ!?

いやいやいや、何言ってるの!?


ソウ君の注文になれているのか、甘味処のお姉さんは笑顔で「はいよ」と受け入れた。


ソ、ソウ君?

貴方、甘味好きの度合いを超えているのでは??


「アキさんと一君は何食べますか?」

「俺は大福を一つ」


一君はソウ君の異常を物ともせず、適正量を頼んでいた。


え、これ、突っ込むべき?突っ込まないべき?


ソウ君がおかしいんだよね??

普通、そんなに沢山食べないよね?

てか、食べれないよね?!


「アキさんは?」


話を振られ、動揺しかける。


『え、えーと、餡蜜食べようかな』


何食わぬ顔をするソウ君に僕は終ぞ聞けなかった。


その後、胸焼けがするほどの量の団子と餡蜜をペロリと食べ切ったソウ君は、ある種の化け物かもしれない、と僕は心の中で思ったのだった。