それから毎日、ご飯を作ったり、屯所内を隈なく掃除したりと家事を繰り返すこなす内にすっかり日常と化した。
…かと思えば、忙しさに慣れた頃に、また新たな問題が顔を出すのだった。
「アキという小姓を出せ」
屯所内に轟く低音に、僕の耳が反応した。
お、この威圧感満載な声は…。
未来視ができる僕に知らない人間などいない!
なーんて、芹沢鴨は有名だから知ってて当たり前か。
『はーい』
呼ばれたら直ぐ行く僕は、対応に困り果てている近藤さん側の隊士の後ろから顔を出した。
すると、眉に皺をつけた厳つい美丈夫が貫禄を持って佇んでいた。
あ、この人、間違いなく芹沢鴨だ。
出会いとか無くて良かったんだけどな。
顔を合わせた僕等は、当然、バチッと目が合う。
「…ほぉ、噂に違わず随分と綺麗な顔つきじゃねぇか」
僕の顔をジッと見る芹沢鴨の目が細められる。
ナンカ ヘビニ ニラマレタ カエルノ キブン。
『噂?』
僕、いつの間に噂とかされるほど顔が売れていたんだ?
僕の噂を流した奴よ出てこい。
「儂は芹沢鴨、ここの局長だ。
当然知っておるな?」
悪評だらけの貴方の名を知らない人間はいないと思います。
なんて、口が裂けても言わないけど。
『存じております。
僕は沖田の小姓のアキと申します』
一応恭しく頭を垂れといた。
この人も局長だし、近藤さんと態度変えるのは失礼だもんね。
「貴様、料理の腕が良いそうだな?
ちと儂等のためにも作れ」
芹沢さんの突然の頼みに目が点になる。
噂って、僕の料理のことなのか。
『え?料理?してもいいですけど…、
僕近藤さん側ですよ??』
堂々と正直にバンッと敵宣告をする僕に、近藤さん側の隊士が顔を青くする。