やがてノソノソと起き上がってきた隊士達が、広間に続々と姿を現す。


「滅茶苦茶良い香りがする…」

「なんかいつもより美味そう…」


眠そうにしながらも、隊士達は自分の食膳の前に座った。


「あ、アキさんだ!おはようございます!」


既に覚醒している数人の隊士に笑顔で挨拶をされた。

僕は小姓だから敬語遣わなくてもいいのに、律儀だなぁ。


『おはようございます』


反射的に僕も笑顔を浮かべて、挨拶を返す。

すると、隊士達は何故か顔を赤くして俯いてしまった。

?どうしたんだろう?


「おはようございます、アキさん」

『わっ』


ズシッと肩に載った重みに目を丸くする。

顔を上に向けると、ソウ君が僕の首に両腕を巻き付かせてニッコリ微笑んでいた。

他の構図から見てみれば、抱き着いているとも捉えられる。


『ソウ君、おはよう』


きちんと起きてくる様子を見ると、やはりソウ君は手のかからない子だ。

良い子良い子、とソウ君の頭を撫でたら、「犬扱いは止めて」と怒られた。


「え、あの沖田さんが朝餉前に起きているぞ…」

「雪でも降るのか?」

「槍の間違いだろ」


隊士達がコソコソ話している方に、ソウ君は首をひねる。

 
「そこ、黙りましょうか」

「「ひっ!」」


不穏な圧をかけて黙らせるソウ君に、僕は何のことやらと首を傾げていた。