早朝、そして日が昇る前に、目を覚ました僕は布団を畳んで、着替える。

それから、寝ているソウ君を起こさないように、そっと部屋を出た。

音もなく障子を閉めて、厨に向かった。


「あ、おはよう」

『おはようございます』


厨には、井上さんが立っていた。

にこやかに微笑む彼は、朝に強いらしい。

いつも、この時間には起きてるんだなぁ。

仕事や剣の修業もあって、日々忙しいだろうに。

井上さんの苦労が垣間見えた気がした。


「料理は得意?」

『大得意です!』


腕を見せて自信満々に答えると井上さんは安心したように笑った。

僕の右に出る者はいないぞ!


「良かった、じゃあ始めようか」

『はい!』


割烹着を貸してもらって、身につけた。

よし、頑張るぞ!

それから間もなくして、井上さんと僕の共同料理が始まった。



二刻後。


朝餉に間に合うように、食事は無事完成した。

広間に食膳を並べて、僕と井上さんは息を吐いた。  


「やっと終わったね…」

『毎日毎食この作業するの大変ですね…』


予想よりも、結構大変だった。

一人でこの量を作って並べるのは流石にしんどいよね。

これからは僕も尽力して井上さんを支えよう。


「アキくん、とても手際よかったね」

『ありがとうございます』


井上さんに褒められて、頬が緩む。

感心して僕を見ている井上さんに、僕は満更でもない気持ちだった。

伊達に何百ね…いや何年も料理やってないからね。


「料理人にも負けないと思うよ」

『そうですか?』


確信した表情を浮かべる井上さんの言葉に、僕は照れた。

料理人、目指してみるのも有りだったかも。


井上さんの褒め殺しは暫く続いた。