暗くなりかけた空に気づいて、僕は腰をあげる。


『そろそろお暇するね。
 宿を探さなきゃいけないから』


あんまり夜になると、酒に酔った連中に絡まれそうだし。

下手な諍いは避けたい。

一通り話も終えたところで、出ていこうと踵を返したら。


「…待て!」

「待ってよ」  

ガシッと両腕を掴まれた。


『う、わっ!?』


右手にトシくん、左手にソウ君。

両手ならぬ両腕に花状態だ。


僕は再び、二人の手によって強制的に座らされた。


『え、なぁに?』

「アンタ、暫くここにいんのか?」

『?うん、数年は京都で過ごすつもりだよ』


前々から自分の余生は京都で過ごす決めていた。

全国巡ったし、もういいかなぁ。

質問の意図が分からなかったけど、とりあえずトシくんにうなずくと、今度はソウ君が口を開いた。


「じゃあ、もう居なくなったりしませんか?」

『え、多分…?』


…居なくなる、か。

ソウ君の言葉には肯定しかねて濁してしまった。

ソウ君の不安そうな瞳に、僕は何て言葉をかければいいか分からないかったから。


数年後には、僕この世界から消えてるかもしれない。


もしかしてトシくんの質問もソウ君と同じで僕が突然姿を消すことが不安だったのかな?


僕が、多分、と答えた後、二人は難しい顔をし、目を合わせていた。


「ヒソヒソおい、総司。
 こうなったら、やるしかないよな」

「ヒソヒソ強引にいきましょう」


トシくんとソウ君はコソコソと話し込んでいたけど、内容までは聞こえなかった。