「行きましょう」
 
ソウ君に再び手を惹かれ歩きだす。

3人は道をあけてくれた。

って、おいおい?!


『僕、中に入っていいの?』


思い切り、部外者では?

ちょっと待て、と軽く足を踏ん張り抵抗してみるが。

抵抗した瞬間、腕を掴む力がました。

痛い、痛い、痛い!

僕の抵抗を物ともせず、ソウ君は振り返ること無く淡々と言った。


「私の客人なので咎められたりしませんよ。

 てか、黙ってついて来ないと切り捨てますから」

『ええぇ…』


そんな横暴な…、この腹黒君め。

痛い目はみたくないから、仕方なく引き摺られることにした。 

なんか無駄に平隊士達から視線浴びてたけど、知らないふりをしておいた。

ダレカ、タスケテー。


僕の腕を引いていたソウ君は、ある部屋の前で止まった。

そして、声をかけて入るのかと思ったら、スパーンと勢いよく障子を開いた。


「土方さん、入りますよ」


…ソウ君、大胆かつ非礼だね。

とんでもない行為しといて何故そんな冷静なの?


「おいコラ総司ぃい!!
 声かけてから入りやがれ!」


次に、低音の怒鳴り声がキーンと耳を差した。

煩い…。


「そんなカッカしてたら寿命縮みますよ」

「誰のせいだと思ってんだぁ!!」


おぉ、漫才みたい。

素晴らしく話が噛み合っていない会話に吹き出しそうになった。

あー、これ、犬猿の仲に見えて、実は息ピッタリなヤツだ。

ソウ君で見えないけど、どんな人が中にいるんだか…って、ん?


土方…?ひじ、かた…。


引っ掛ける名字に首をひねる。

あれ、僕、この名字を知ってる??


「お前なぁ、要件はなんだ!?
 これでも俺ぁ忙しいんだよ」

「知ったこっちゃありませんよ。
 アキさん、拾ってきました」


おい、人を猫みたいに言うな。


ソウ君は僕の前から退くと、土方?さんという人の前に僕を押し出した。

真正面で彼と目が合う。

わぁ、なんか美丈夫がいるぅ。

(激怒して)鬼みたいに角を生やした美丈夫がいるぅ。


流れるような黒髪は一つ結びにされていて、思わず息を呑むようなキリッとした綺麗な顔。


その美丈夫は僕の顔を見た瞬間、ピシリと固まった。

見つめ合いの末に、僕は思い出すことができた。

パッと指を指して懐かしい人の名を呟いた。



『トシくんだ』


まさかの再会(2回目)に、僕は間抜けな顔をしてしまった。


そっか、土方歳三、それが彼の総称だった。


トシくんは中性的な面立ちから、大人な美丈夫に変化していた。

もう間違っても女になんて見えないね。

女装したら似合いそうではあるけど。

ソウ君は全く気付かなかったけど、トシくんは直ぐに分かった。

あの鬼強なトシくんが、副長なんて、出世してんなぁ。