「おはよう,朱鳥さん。今日もさらさらのストレートが綺麗ですね。口説いてもいいですか?」

「……だめ」

「そんなところも好きです」



今にも抱き付いて来そうなテンションに,心臓が先に防衛体制を取る。

だめだよ,だめ。

そんな言葉,一々真に受けてたら……

そこで,開きかけていた口を閉じた。

きゅっと閉じると,目が泳ぎ。

1週回りきった恥ずかしさが込み上げて,唇に力を込める。

そうだった。

何がなんだかよく分からないけど,それを一々真に受けなくちゃいけない約束をしたんだった。



「…………今日は何も言わないんですか」



血夜くんは今日も,余計なことばかり。

その言葉までしっかり飲み込んで,言う。



「いつものじゃ,だめなんでしょ。余計なこと言わないように,閉じてるの。だから好きとかそうゆうの,やめて」

「素直で真面目な朱鳥さん,やっぱり可愛いです」

「それもだめ!」

「どれですか?」



私はキッと血夜くんに目力を込めて,はっきりと正面から向き合った。



「好きも,可愛いも,綺麗も,全部だめ!! 私を褒めるの,禁止だから!」

「うーん……何でですか?」