「待て。」

 パシッという乾いた音が響き、強制的に足を止められる。

 わ、私のほうこそ待ってくださいっ……なんて言えず、何も言えないまま理仁さんのほうに振り返る。

 それと同時にさっきの甘い視線が絡んできて、ほとんど反射的に顔に熱が集まった。

 さっきから私、なんだか変だっ……!

 理仁さんもいつもと様子が違うし、どうなってるのっ?

 疑問ばかりが膨れ上がり、ぐるぐると脳を支配していく。

 そんな中理仁さんは、瞳の中に熱を帯びたまま。

「花火大会、忘れんなよ。迎え、行くから。」

 そう言って、ふっと悪戯っ子のように微笑んだ。