「二人の仲が悪くなるきっかけが何かあったんじゃないですか? それまでは良好な関係だったんでしょう?」
「うーん……。そうなんだけど、私やクラウス、側近たちもさっぱりで。ただ、宮殿裏の森にある泉へ行ってから関係が悪化したことだけは覚えている。昔は将来結婚しようなんて言い合うほどだったのに……」

 オーレリアはトラヴィスの話を聞きながらパーシヴァルの運命の相手が誰なのか確認するために、再び指でわっかを作ると彼の赤い糸へ意識を集中させる。と、名前を確認する前にパーシヴァルの赤い糸がイメルダの小指に繋がっていることに気づいた。


 オーレリアは目を擦るともう一度わっかを作って覗き込む。やはり、パーシヴァルとイメルダは運命の赤い糸で結ばれていた。
 嫌よ嫌よも好きのうち――ということだろうか。

 しかし二人を結ぶ赤い糸はクラウスの時とは違って蜘蛛の糸のように細くて頼りない。

(これは私の推測だけど、このままの状態が続けば二人の赤い糸が切れて運命の相手じゃなくなってしまう。なんとかしなくちゃ……)


 そこでふと、オーレリアは『彩鳥』という言葉を思い出した。
 パーシヴァルやイメルダが言う彩鳥がオーレリアの知っている鳥を示すものならこの問題をなんとかできるかもしれない。

 オーレリアはトラヴィスに声を掛けると、自身の口元に手を寄せてから彼に耳打ちする。
 話を聞いたトラヴィスは小さく頷くと早速フレディを呼んで手はずを整えてくれた。



 少し時間が経って三ヶ月後。
 パーシヴァルは宮殿裏の森にある泉へと足を運んでいた。学園を無事に卒業した彼は皇帝代理のトラヴィスの補佐として日々奮闘している。

「トラヴィス兄上に泉の水質調査をしたいから先に向かって欲しいって言われて来てみたけど、他の文官や専門家はいないみたいだな。何人か待機していると思ったんだけど」

 パーシヴァルが首を捻りながら泉を眺めていると、背後から足音がする。
 振り返ると、やって来たのはイメルダだった。