そして、まさか本当にその不安が現実となるなんてこの時の俺は夢にも思っていなかったんだ――。

♢◆♢

『烏丸先輩…た、助けてください。東雲さんが…不審者に』

廊下を歩いていた俺の姿を見て、必死に訴えかけてきたのは…見覚えのある女子生徒たち。確か、芽亜里達のクラスメイトだ。

"不審者"

その言葉が気になり、俺は彼女達に「わかった、お前らは先生に伝えろ」とだけ告げると走り出していた。

『…ッ!?』

俺の嫌な予感は当たっていて、現場に到着した俺の目に飛び込んできたのは、ヴァンパイアと、襲われそうになっている彼女。

その瞬間、カッと頭に血が上り、気づけば相手の腹を思い切り殴っていて…。

雑魚だったからよかったものの、力が弱まっている期間に無茶をしたなと冷静になった今では思う。

でも、彼女を助けたことに後悔はないし、むしろ間に合っていなかったと考えるとゾッとする。

そして、そのまま成り行きで俺の正体を伝えた時。

凪や怜也のように驚いてはいたものの、気にする様子は微塵もなくて、内心嬉しくなる自分がいた。

本当、見てて飽きないヤツ…。

凪が構いたくなる気持ちがちょっとだけわかった気がする。

あ、ちなみに最後にキスしたのは、ちょっとした嫌がらせ。
だって、俺といるのに凪の話ばっかりだし。

『…え?』と聞き返す柚葉に笑いそうになりながらも俺は治療という名のキスを落とす。

瞬間、驚いたような彼女の反応を見て満足して『これで少しでも俺で頭がいっぱいになれば良い』と思った辺り、俺も大概どうかしてる…。

そんなことを思いつつ、俺は小さく肩を落とした。

気づいてしまった彼女への気持ちに、正直戸惑いを隠せないでいたのだった――。

♢◆END◆♢