キョトンとする私の手をキュッと握り、お礼を言う芽亜里ちゃんに、思わず胸の中がほわっと、温かい気持ちで満たされた。
しかし、次の瞬間には。
「それに、柚葉ちゃんになら、凪くん任せられるし…!私、2人のこと応援するから」
と、瞳をキラキラさせて詰め寄る彼女に、わけがわからず私の頭はハテナマークが浮かぶ。
「ちょ、ちょっと待って?芽亜里ちゃん…?どういうこと?」
慌てる私をよそに真剣な表情で私を見つめる彼女に思わず口角がひきつった。
「だって、凪くんは柚葉ちゃんのこと気に入ってるみたいだし…!柚葉ちゃんさえ良ければ私の兄をよろしくお願いします」
「芽亜里ちゃん!?ひとまず、落ち着こう。そんなことないからね?事実無根だと思うよ…?」
否定する私に彼女は「凪くんとはわりと長く兄妹やってるし…なんとなく雰囲気がいつもと違うな〜とかはわかるもん!絶対に柚葉ちゃんのこと気になってるよ」と満面の笑みで返されてしまう。
どうやら、芽亜里ちゃんの中で、"凪が私を好き"という間違った認識が定着してしまったようだ。
東雲柚葉、高校生活2日目にして、とてつもなく面倒な勘違いに巻き込まれてしまったみたいです…。
内心そう思い、私は小さく肩を落としたのだった―。