「姉さん…!大丈夫?」

心配そうに駆け寄ってきた冬夜を私は自分の背に隠し、3人に向き直った。

「…弟に手を出したら許さないから」

キッと睨みつける私に対して、3人は目を見開く。

「この匂い…」

「ヤバ…すぎでしょ」

「…っ」

なぜか、苦しそうにその場にうずくまる3人に私は戸惑った。

な、なに…?急にどうしたの??

その時。

「…っ!姉さん、手首…血が出てる」

冬夜に言われ、ハッとする。

さっき、翔月から逃げる時に出来た小さな擦り傷から若干血が滲んでいたのだ。
冬夜は、慌てたようにポケットから出したハンカチで傷口を塞ぐ。

「大丈夫よ、冬夜。これくらいかすり傷だし…」

「姉さんは大丈夫でも、彼等が大丈夫じゃないんだよ…」

ハァ…と小さなため息をついた冬夜の視線を追う私は、未だにうずくまる3人を見つめ息を呑んだ。

だって、先ほどまで漆黒、碧、灰色だった彼等の瞳がルビーのような紅色に変わっていたから…。

その時、ようやく思い出したんだ。

『こっちが1番重要よ?…NVのヴァンパイアの血液は他のヴァンパイアにとってはすごく魅力的なの。だから、ヴァンパイアの前で血を見せたらだめよ…絶対に…ね』

母に言われたこの言葉――。

それと同時に理解した。

私の血が彼等、ヴァンパイアに与える影響の大きさを――。