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『いい、柚葉?NVのヴァンパイアは希少だからまだ詳しくはわかっていないことが多いの。だから世間的には、NVは、"普通の人間"って思われているけれど…。ヴァンパイアから生まれたわけだから、個人差はあれどどうしても普通の人間とは違う部分があるわ…』
『違う部分…?』
『えぇ。そうよ…。例えば、NVのヴァンパイアは、他のヴァンパイアに対してすごく敏感なの。危機的察知能力とでも言うのかしらね…』
危機的察知能力…。
それを聞いてなんとなく腑に落ちる自分がいたのを覚えている。
そう、両親が仕事から帰宅する際、まだ姿が見えてもいないのに2人の気配を感じ取ることがあった。
『ふーん?でも、お母さんたちがすぐわかるから便利だね〜』
『ふふ。そうね…。それに、この能力はあなたの身を守ることにも役立つわ。柚葉、覚えておいて?より力の強いヴァンパイアほど気配を隠しておくのがうまいの。例えば、近くまで来てようやく気づくレベルのヴァンパイアだったら迷うことなく逃げなさい。おそらく、東雲家よりも強い純血家系のヴァンパイアだから』
『わかった』
私は、母の言うことに素直に頷く。
そんな私の反応を見て安心したのか、母は、『まぁ、心配しなくてもそのレベルのヴァンパイアなんて滅多にお目にかかれないから大丈夫とはおもうけどね?』そう付け加えて微笑んだ。
『それからもう1つ…こっちが1番重要よ…それはね……』
真剣な眼差しで言葉を紡ぐ母、蓮香。
しかし、懸命に耳を凝らすも、その声は聞き取れない。
あれ?話の続き…お母さん、あの後なんて言ったんだっけ?
そんなことを考えた時、さっきまで目の前にいたはずの母の姿がこつ然と消え、辺りは急に闇に包まれる。
そっか。これ昔の夢なんだ…。
そう悟った瞬間、私の目の前に無数の光が降り注ぎ、思わず目を閉じた私の耳元で、誰かの声が聞こえた気がした―。



