「柚葉ちゃん、ありましたよ。柚葉ちゃんの名前…!ほら、窓側の前から3番めの席です」  

「うーん?あ、ほんとだ。見つけるの早いね芽亜里ちゃん。芽亜里ちゃんは…真ん中あたりの席か。ちょっと離れちゃったね」

教室にたどり着いた私達は、お互いの席を黒板に貼られた座席表を確認する。

「近くがよかったですけどしょうがないですね…」

「まぁまぁ、クラスは一緒なんだし」

シュンとする芽亜里ちゃんに私がそう声をかけた。

その時。

「あれー?藤峰さんとクラス一緒とかマジでツイてないんですけど〜」

わざとらしく語尾をのばした大きな声が教室内に響き渡り、周りのクラスメイトたちからの注目が一気に集まる。

ビクッ。

そして、その声に私の隣にいた芽亜里ちゃんは小さく肩をすくめていた。

…芽亜里ちゃん?

不思議に思い私が「大丈夫?」と声をかけると彼女の顔色が悪いことに気づく。

「あら?あなたもしかして…高校からの入学組?」

「…えぇ。そうだけど」

先ほど、わざとらしく大きな独り言を呟いていた女子生徒が芽亜里ちゃんの近くにいる私の存在に気付いたようで声をかけてきた。