密かにバラデス王国へ入国した途端、めちゃくちゃ怪しげな奴に遭遇した。

 そいつの名はヘルマン・サルディバル。自称バラデス王国の王子の一人。

 バラデス王国の国王の血筋だとはいえ、そこで育っていないおれとしては、それが真実なのかどうかわかるわけがない。
 もしもそれが真実なのだとすれば、彼とおれは腹違いの兄弟ということになる。
 不本意ではあるが。

 とにかく、ヘルマンは胡散臭すぎる。
 この国の、というよりかは暗殺された国王やその王宮での様子をうかがっただけでも、ヘルマンも怪しいとしか思いようがない。

 彼が黒幕であったとしても驚かない。あるいは、黒幕を知っていたりグルであったとしても。

 彼の胡散臭さについては、おれだけではない。あらゆる意味で鋭く勘のいいカヨもまた、同様に感じている。
 彼の話を鵜呑みにするわけにはいかない。参考にはしても。
 彼を信じてはいけない。利用はしても。
 一番いいのは、彼におれたちのことを信じさせつつ、彼を利用してこの国で行動することだ。彼の資金も含めて。