「王子は、わたしも含めて四人。クストディオ、きみも含めれば五人というわけだ。わたしたち四人の力は拮抗していてね。ずっと王太子争いが続いていた。だから、いざ国王が亡くなっても、すぐにその座を継げるわけではない」

 ヘルマンは、胡散臭さ満載の美貌に弱気な笑みを浮かべた。

「亡き国王を暗殺したのは、わたしたち王子の中のだれかだと噂されている」

 彼は、まるで他人事のように続けた。

「もしかしたらそうかもしれないし、違うだれかの仕業なのかもしれない。いずれにせよ、そんな噂のあるわたしたちだ。いますぐわたしたちのだれかが玉座に就くというのは難しい。それに、亡き国王の遺言のこともある」

 彼は、クスとディオを見た。その鋭い視線には、悪意がうかがえる。

 ここまできたら、亡き国王の遺言、つまり玉座を継ぐのがだれかが想像出来る。

「クストディオ、きみだよ。どうやらきみが、あたらしい国王のようだ」

 ヘルマンは、静かに告げた。