じつは、エドムンドとフェリペが捕らえた暗殺者は黒幕は宰相だとあっさり白状した。もしかすると、その暗殺者はまだ駆け出しだったのかもしれない。もしくは変わり者だったのかも。

 とにかく、プロの暗殺者が依頼人の名を明かすわけがない。どれだけ尋問されようと脅されようと、彼らはその名を告げるよりも沈黙を守る。あるいは、死を選ぶ。それが彼らのいわば掟のようなものらしい。

 それなのに、あっけなく白状したのである。

 まるでそう告げるよう、命じられているかのように。それをいうなら、捕まったのも宰相の名を告げる為にわざと捕まるよう命じられていたのかもしれない。

 ということは、宰相は黒幕ではない。

 ということは、暗殺者を差し向けられるのは、隠れ家を知っている者しかいない。すくなくとも、その可能性はかぎりなく高い。

 そんなことは、三歳児でもわかることだ。