「わたしとしては、人生が面白ければそれでいいの。もちろん、条件があるわ。まず、エドとフェリペを解放して。わたしの執事として置いておきたいから。それから、クストが見つかっても殺さないで。彼、一人ではなにも出来ない。つまり、わたしがいなければ、彼に出来ることは泣きべそをかくことくらいよ。脅してこの国から放り出して。ああ、そうそう。亡くなった国王の遺言書も取り上げた方がいいわね。念のため、だけど。それから、その国王を弑逆したのはだれ? それが一番知りたいの。お見事よね。そのあとに続いた混乱もわざと起こるようにしたみたいだし。なにより、正当な後継者であるクストを誘いだし、その存在を否定してしまったのだから。これらすべて、緻密な計算のもとに策を立てたに違いない。その策士を褒め称えたいわ」
「ぼくだ」

 車椅子上でクレメンテが誇らしげに宣言した。

「おまえのレディの勘には驚きだ。だが、さすがにほんとうの黒幕まではわからなかっただろう? すべてぼくの策だ。この二人は、ぼくの完璧な策に従わせただけだ」
「なんですって? まさかあなたが?」

 精一杯驚愕の表情を浮かべ、両手を打ち合わせて驚いてみせた。

 わたしのおおげさな驚きぶりは、クレメンテを大変よろこばせた。

 ニヤニヤ笑いが止まらないみたい。