というよりか、クレメンテ。わたしのすべてがダメって、初対面のしかもまだほんのわずかしか経っていないのに、わたしを全否定するって何様なわけ?

 体が不自由なのは承知しているけれど、彼の青白い美貌をぶん殴ってやりたくなった。

 もちろん、レディの中のレディであるわたしはそんなことはしないけれど。頭の中でその光景を思い浮かべつつ、お兄様推奨の深呼吸をして十数えておく。

「やめてくれ、二人とも。アルマンド。彼女を味方にするのなら、なにもきみが彼女を妻にむかえなくてもいいではないか。たとえば、わたしが彼女を妻にしてもいいだろう?」
「なんだって? ヘルマン、なにを言いだすんだ」
「だってそうだろう? わたしの方がまだ彼女も打ち解けやすいはずだ。きみは、彼女にかなり悪い印象を持たれているようだし」