訪問の相手は、第一王子アルマンド・サルディバルである。

 アポイント?

 もちろん、取っている。

 ただし、外交官としてだけど。

 名前も母の旧姓を使った。

 贅を尽くした庭園を通過し、豪壮な造りの宮殿にやって来た。

 馬車での訪問ではないけれど、そこは弱小アルファーロ帝国の一外交官だから仕方がない、ということにしておく。

 幾度か証明書を見せ、たらいまわしにされ、挙句に控室で長時間待たされた。そして、やっと第一王子の執務室の控えの間に入ることが出来た。

 しばし待ってくれとのこと。

 わたしだけが椅子に座り、エドムンドとフェリペは立っている。

 二人もまた黒色のスーツで身を固めている。

 三人で並ぶと、書物に出てくるレディの親玉とその手下たち、に見えなくもない。