それまで無言だったクストディオが口を出してきた。

 その声は低く険しい。

「ヘルマン。つまり、きみが宰相側におれを売ったというわけだ。おれのことを捜しているであろう宰相に、だ。それを知った宰相は、よろこんだだろうな。そうして、すぐに殺しを依頼したわけだ。おれとカヨを殺す依頼をな」
「おいおいクスト。人聞きの悪いことを言うなよ。きみたちを売る? わたしたちの問題を早期に解決する唯一の方法だ。けっして売ったとか切り捨てるというわけではない」

 ヘルマンは、さわやかな笑顔で非情きわまりないことを平気で言う。

 物は言いようよね。

 当然のことながら、クストディオとわたしが自分の身を差し出して宰相と決着をつけるなどというのが唯一の選択肢ではない。

 早期に解決するというのなら、こちらが宰相を暗殺する依頼をすればいいのだから。