バラデス王国に入っても、同じような山道を進む。

 先頭をゆくエドムンドは、左頬に刃物傷があってワイルドな美貌の持ち主である。

 諜報員と表明したけれど、ふつうそれは隠すものなのじゃないの?

 どうも怪しくてならない。

 唐突にクストディオを誘いに来るなんて。しかも、玉座をチラつかせて。なにもかもが不可解でならない。

 たしかに、国王暗殺はいい機会ではある。だけど、追い払われたも同然のクストディオにその玉座が継げるかといえば、それはまったく違う。

 それとも、バラデス王国もアルファーロ帝国同様、おバカすぎる王子ばかりいるのかしら?

 だとしても、後ろ盾や周囲までおバカではないはず。王子なんてしょせん傀儡。立てるだけ立てて、後ろ盾たちが支配するというケースは多い。

 たとえクストディオが玉座争奪戦に参戦したとしても、とてもうまくいくとは思えない。

 とはいえ、こうしてノコノコやって来た以上は、様子を見るだけでも見ておかないと。

 それにしても、馬の揺れが心地よすぎる。

 馬上で何度か舟をこいでしまい、その都度クストディオに嫌味を叩きつけられ、揶揄われた。

 まったくもう。ほんと、イヤな奴よね。