「その、カヨ様はそのようなことはありません」

 厨房内の淡い灯火のせいかしら? 彼の可愛らしい顔が真っ赤になっている気がする。

 もしかして、熱でもあるのかしらね?

「『そのようなことはない』って、なんのこと?」
「その……」

 彼は、言い淀んだ。

「あの、その、第一王子が言ったようなこと、です」
「ああ。『そそられない』ってこと?」
「そんなこと、そんなことありません。その、カヨ様は魅力的、そう魅力的です」

 こちらに体ごと向いて真っ赤な顔で叫ぶ彼が尊すぎる。

 うれしいけれど、申し訳ない気もする。

 こんなに気を遣わせてしまって、と。

 無理しなくてもいいのに、と。

 ほんとうに真面目だし、思いやりの塊なのね、とも。