階段から落ちた本人が「大丈夫」だと言っているのに、クストディオはまるでわたしが重傷を負っているかのように言い張る。

 そんなやり取りの最中でも、彼は足を止めることはない。廊下を歩き続けている。

 ちょうどそのとき、エントランスにさしかかった。

「ガチャン」

 突然、古めかしい木製の扉が大きな音を立てた。その大きな響きに、二人して驚いてしまった。

 クストディオは、わたしをお姫様抱っこしたまま扉の方に向き直った。

 なんてことかしら。開いた扉の向こうに三人の男性が立っている。

 両者の間に奇妙な沈黙が流れている。

 実際の時間はわずかだけど、体感的には永遠とも思えるほどの間その沈黙に耐えなければならなかった。