おれの気持ちはともかく、彼の息子たち、つまり王子たちが揉めに揉めているという。正確には、その後ろ盾や親族や関係者などがである。

 強欲で不老不死を気取っていたらしい国王は、王太子を決めていなかった。いついつまでも自分が玉座にふんぞり返っているつもりだったのだろう。

 母がそうであったように、人間の死はあっけない。見たこともない父もまた、兇刃によってあっけなく命を絶たれた。

 その傲慢な考えが、残された者たちを混乱に陥れたというわけだ。

 抜け目もぬかりもなさそうな諜報員は、刃傷のある顔に不敵な笑みを浮かべて言う。

「どの王子もクズばかり。そのクズどもを一掃し、バラデス王国の王となってはどうだ?」

 そのように。

 血を継いでいるというだけで、おれにはなんの資格もない。

 しかし、たしかにその誘いはそそられる。

 これを言い訳にすれば、もしかしたらカヨといっしょにいられるかもしれない。