そう。おれは、カヨのことが好きだ。子どものときから。彼女に初めて会った瞬間、ビビビッときた。そのビビビッは、すぐに確信にかわった。以降、彼女への想いは日を追うごとに激しく深く強くなっていった。

 カヨがあいつの婚約者になったとき、当然おれは反対だった。だけど、おれはまだほんの子どもだった。力も知恵もなかった。それから、勇気も。
 残念ながら、それはついこの前までかわることはなかった。

 だからこそというわけではないが、隣国バラデス王国の諜報員が密かに訪れてきたとき、話をきいてみようという気になった。

 バラデス王国の国王が失脚したらしい。というか、暗殺されたらしい。

 国王は、おれの遺伝子上の父親である。そして、彼は母とおれを捨てた。だから、暗殺されたときいてもなんの感情もわかなかった。しいて言うなら、暗殺など物騒きわまりないな、というくらいか。