それはともかく、おれの言い方がよくなかったらしい。彼女が怒り出したので、慌ててエドムンドにも振ってみたが、優秀な諜報員である彼も、こういうことは苦手らしい。まったくお役に立たなかった。

 しかし、フェリペがいい仕事をしてくれた。

 彼女の元婚約者であるダニエル・ウリバルリの話をきいて怒りだしたのだ。

 そのお蔭で、彼女は機嫌を直した。

 が、おれへの怒りはおさまってはいなかった。

 全力で肩を殴られてしまった。

 彼女にナイフを持たせずとも、襲ってきた相手を拳だけでノックアウト出来るはずだ。

 つくづく実感した一瞬だった。