そして、遺言の存在を知る者の中に、こちらの協力者がいるようなことを口走った。

 すぐに彼女の機転に合わせたおれもさすがだが。

 自画自賛はともかく、宰相の前を去ったときの彼の顔といったらもう。

 宰相は、せっかくの渋い美貌が台無しなほど苦虫を嚙み潰した表情になっていた。

 その顔を見ただけで、すこしは溜飲を下げることが出来た。カヨのお蔭であることはいうまでもない。

 そのあと、おれたちはいるかもしれない尾行を巻きながら隠れ家へと戻った。