あいつは、おれの形ばかりの婚約者であるブランカ・プレシアドにまんまとだまされたのだ。

 ブランカは聖女の家系の出身だが、彼女自身にその力はまったくない。すくなくとも、いまのところは覚醒していない。

 どっちもどっちだろう。おそらく、彼女の父親である宰相の差し金に違いない。

 たがいに利害が一致したのか?

 とにかく、薄っぺらな信頼と浅く広い愛情の狭間でいつまでもつのか。

 とりあえず、カヨとおれはたがいの婚約者から婚約を破棄された。

 どうやらおれは、ブランカを顧みることなくカヨと浮気をしていたらしい。