ダニエルに呼び出されたから控えの間にいると、嬌声とギシギシ音とがきこえてきた。

 ローテーブルをはさんだ向こう側の長椅子に座っているクストディオ・トルタハーダと、反射的に顔を見合わせてしまった。

 クストディオは、ブランカ・プレシアドの婚約者である。
 彼もまたダニエルに呼び出されていて、二人でバカみたいに控えていたというわけ。

 クストディオのお母様はこのアルファ―ロ帝国の皇帝の妹、つまり皇女だった。彼女は敵対国の国王に嫁いだけれど、クストが生まれた直後に離縁されてクストともども帰って来たという経緯がある。
 残念ながら、彼のお母様はそのすぐ後に心労で亡くなってしまった。だけど、彼はダニエルと同年齢ということもあっていっしょに育てられたのである。

 そして、彼はわたしの天敵でもある。

「はああああああああああっ」

 おもわず、溜息がでてしまった。

 おバカのダニエルは、これをきかせるためにわたしたちを呼んだのかしら? それとも、呼んだことを忘れて癒しの行為にいそしんでいるのかしら?

 バカのバカな振る舞いに、これ以上付き合うつもりはない。

 だから、立ち上がった。