カヨが「世紀の悪女」と呼ばれるようになったのは、彼女の幼い頃からの婚約者であるダニエル・ウリバルリ、つまりおれの従兄が皇太子候補になった頃からだ。

 ダニエルは、おバカというだけでなく強欲の上に傲慢で意地悪だ。あいつを立派な皇太子にする為、彼女は公私にかかわらずあいつを支え続けた。あいつを守り、優秀な皇太子候補に見せかける為に、彼女は自分が嫌われたり怖れられることを厭わなかった。

 そのお蔭で、あいつは皇太子になれたと言っても過言ではない。

 彼女の呼び名は、そんな彼女のステイタスでもある。

 しかし、彼女でもおバカなあいつを救うことが出来なかった。

 あいつがついに裏切ったのだ。

 訂正。裏切りは最初からだった。

 最初から、あいつは様々なレディと遊んでいた。侍女、各種教師、官僚や貴族のご令嬢等など。あくまでも遊びだ。そこに愛はない。あいつとカヨの間にそれがないように。

 あるときから遊びではなく浮気にかわった。