「頼むから、宰相に馴れ馴れしくそんなことを尋ねないでくれよ」
「わかっているわよ。というか、尋ねるわけないでしょう? まったくもう、そんなに気負わないで。うまくいくこともうまくいかないし、幸運だって逃げてしまうわ」
「気負ってなどいない……」

 不意に彼が口を閉ざした。

 その目は、進行方向を見つめている。

 彼のその視線を追った。

 店のエントランスに、黒色のジャケットと同色のズボンで身をかためた二人の強面紳士が立っている。