「こちらです。葡萄の名産地のものです。きっと美味いはずです」
「ありがとう。貴重なものだろう? いいのか?」
「もちろんです。ぼくらはめったに飲みませんので。これは、お二人にと入手したのです」
「そうか。だったら、遠慮なく。カヨにもそう伝えるよ。彼女もよろこぶに違いない」
「ほんとうですか? よろこんでもらえたらうれしいです」

(フェリペ。きみは、純粋すぎる。諜報員としても恋する男としてもまだまだだぞ)

 彼のことを、仔犬みたいだとつくづく思った。

 おれもまた、彼を弟扱いしているようだ。