「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~

 そういえば、ヘルマンはおれを見てもなにも言っていなかった。言葉に出さなくても、似すぎていて息を飲むとか、そういうこともなかった気がする。それは、エドムンドとフェリペも同様だ。彼らも国王の顔は知っているはず。おれを見てもなんのリアクションもなかったということは、外見は似ていないのかもしれない。

 だが、宰相もおれの外見は知らない。

「会ってやろう」という彼の意図は、おれに亡き国王の面影があるかどうかを確認したいからに違いない。

 それならばそれでいい。

 おれという存在を否定するのなら、それはそれでいい。

 部屋に引き取ってから、そんなことを考えているとイライラしてきた。