夕食づくりのことで、カヨにまたいう必要のないことを言ってしまった。

 夕食をだれが作るかで、よりにもよって彼女が立候補したのである。

 おれは、彼女が家事の中で唯一まともなのが料理だと知っている。だからこそ、彼女に恥をかかせたくなかったのだ。

 得意料理が茹で卵だなどと、自慢出来ることか?

 まあ、たしかに彼女くらいの年齢の貴族令嬢のほとんどが卵を茹でることすら知らない。それどころか、茹でた卵の殻をまともにむくことすら難しいだろう。それに比べれば、彼女は卵の黄身がトロットロの状態であろうとカチッカチの状態であろうと完璧に作ることが出来る。それはそれですごいことなのだろう。

 しかし、料理が完璧にこなせる人からすると、それはただ「ふう……ん」程度にすぎない。