「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~

「痛いわ」

 そのあまりの握力に、悲鳴を上げてしまった。

「彼はもう休んでいる。それに、誘えば彼の顔を潰すことになる。どうしてそれがわからないんだ」
「あなたこそわかっていないわよ。彼は気を遣っているの。こちらから誘ってあげるのが気遣いというものよ」
「いいや、きみは曲解している。というか、考えすぎている。他人(ひと)は、きみみたいに複雑に物事を考えたりはしない」
「あなたが単純すぎるのよ。いいえ。面倒くさいから簡潔にしか考えないのね」
「どうしてそう屁理屈ばかり言うんだ。物事を複雑怪奇に考えてよく疲れないよな」
「なんですって? わたしの思考は至極まっとうよ。あなたとは違ってね」
「まっとうだって? まっとうがきいて呆れるよ」

 彼も立ち上がり、大声で口論していた。