「カヨ、おまえが悪いのだ。おまえみたいな悪女が婚約者だから、おれも他に癒しを求めなければならなかったのだ」

 皇太子にして名ばかりの婚約者であるダニエル・ウリバルリは、真っ裸で叫んだ。

 ここは、浴場やサウナ場ではない。ついでに言うと、彼自身の寝室でもない。

 皇宮の皇太子(かれ)の執務室である。

 執務室というのは、執務をしたり打ち合わせをする部屋のはずである。すくなくともその行為に真っ裸になる要素はないはず。

 そして、真っ裸は彼だけではない。このアルファ―ロ帝国を守護する聖女ブランカ・プレシアドも、である。

 わたしは、どうやら入ってはいけないタイミングで入室し、彼らの癒しの時間を邪魔したらしかった。

 つまり、いままさに目の前で「癒しの行為」が行われていたのである。

 あられもない姿で。

 これはもう呆れ返る以前の問題。