「ん？」

A子は違和感を感じ、ある一点を見つめる。誰もいない部屋に置かれた缶ビールが少しずつテーブルの上を移動している。だが、他のものは何も動かない。その事実に気が付いた時、A子の体がブワリと震えた。

「うわ、動いてる……」

缶ビールの異変に気付いた人間はA子だけではなく、数分経つ頃には多くの人が『缶ビールが動いてる！』と驚きのコメントを次々と投稿していった。そして数秒後ーーー。

バサバサッ！

大きな音を立てて、棚に並べられていた漫画や雑誌などが落ちていく。部屋には誰もいないため、漫画などが落ちるなんてことは物理的にあり得ないのだ。

『お待たせ〜！』

コメント欄が怪奇現象のせいで荒れている中、明るい声を出しながらMが部屋に入って来る。その手にはナッツやチーズ、スルメなどが入ったお盆が乗せられていた。

『あれ、漫画が倒れてる……』

部屋の異変にすぐMは気付く。しかし、その声に恐怖などはない。またかと言いたげなものだ。