湖畔に揺れる舟が一艘。
舟をこぐオールにもたれかかる二人の恋人。
心が空に登り、雲に溶けていく、さんさんと降り始める雨に、水辺の野花が、笑っている。波紋を滑る舟の体に、ぬめる藻が、交じり合う二人は、想い出す。
日々が、過ぎていく。
赤く青い幻想は、境界線に滲んでいくつなぎ目に手を差し伸べる、神はいるのか。
水面から立ち上るカーテンのような煙は、星をはらんで、手を握り合う、誓い合った、夕暮れまじかの湖で。
太陽が森の果てに沈んで、火のような鳥が、翼を広げる、小鳥が、交差する。
それは、もやもやと流れる雲の端からリスが二人を覗き込んだ。
二人の視線は、解け合って、理解を超える愛に思い出が泣いている。
涼やかな風。
湖畔には、何もない。
ただ、抱擁する二人の匂いは、生命の香りに似ている、まるで、青草のような。
そして、ビブラートのような自然の影が、後ろで、見ている。
光と、暗闇に、信じた願いは、永遠の救い。