ボロボロの階段を降りようとした瞬間、「うおーっ!」という侯爵の悲鳴とも雄叫びもつかない叫び声がきこえてきた。

 その瞬間、うしろを振り向いた。

「キャアッ」

 よそ見をしたものだから、右足が段を踏み損ねた。

 体がグラついたかと認識したときには、階段上を舞っていた。

 そのとき、アールが階段上からジャンプした。

 二人でもつれ合いながら舞い、それから落ちて行く。

 フワフワした感覚の中、「わたしってばほんとうにドジでバカで意地っ張りだわ」と、あらためて実感した。

 そして、すべてが真っ暗になった。