Good day !【書籍化】

オフィスにShow Up (出社) し、出社確認表にサインとメールボックスチェックをしてから、大和はその日のフライトスケジュールを確認する。


(今日は福岡往復。コーパイは、藤崎……けいしん? と読むのか。初めましてだな。いや、なんか聞いたことあるような……)

宙を見ながら、藤崎……と呟いて記憶を辿る。

(あ! 先月パリ便で一緒だった伊沢が話してた同期か)

人一倍真面目な努力家だが、数々の不運に見舞われていて心配だと伊沢が言っていた同期の名前が、確か藤崎だった。

(なるほど。じゃあその点も含めて今日は気をつけておこう)

そう思いながら、フライトバッグが並べられたオフィスの一角に自分もバッグを置く。

すると、誰かが近づいてきて頭を下げた。

「佐倉キャプテン、おはようございます。本日、福岡便ご一緒させていただく藤崎と申します。よろしくお願いいたします」
「えっ!」

大和は、まじまじと相手を見つめる。

身長は165cmほどだろうか。

スラリとしたスタイルに、くりっと大きな瞳と柔らかいボブヘアで、パイロットの制服を着ているがどう見ても女性だった。

(え、ちょっと待て。藤崎……)

慌てて手にした書類に書かれているクル―の名前を再確認する。

「ごめん、君、下の名前は?」
「あ、はい。藤崎 えまと申します」
「えま? あー、そうか。確かにそうだな」

恵真は普通に『えま』と読めるのに、勝手に男性だと思い込んで『けいしん』と読んでいた。

「あ、すまない。機長の佐倉です。今日はよろしく」

ぼんやりして、挨拶もしていなかった。

大和が改めて名乗ると、恵真ももう一度、よろしくお願いいたしますと頭を下げた。