◇
【こずえー、今時間あるか?】
帰宅してからもなにも手につかずにぼーっとしていた伊沢は、やり切れずこずえにメッセージを送る。
すると、すぐさま電話がかかってきた。
『どしたー? 伊沢』
「うん、あのさ。恵真からなにか連絡あった?」
『ないよ。伊沢は? あれから恵真と話せたの?』
「いや、まったく。だけど分かった、恵真の気持ちが」
『え?」
こずえはしばらく黙り込む。
伊沢も同じように口を閉ざした。
沈黙が続く中、やがてポツリとこずえが呟く。
『諦めるの? 恵真のこと』
「ああ」
『出来るの? 伊沢」
「出来そうにない。でも、そうするしかない」
『そっか』
しばらく考えてから、こずえは明るく言った。
『よし、聞こうじゃない。なんでも話しな? 伊沢の気持ち、ぶちまけたらいいよ』
「なんだよそれ。なにをぶちまけんの?」
『だから、なんでも! 恵真を諦めようって思った時のこととか』
「えー、傷口に塩塗るな、お前」
『違うよ! 伊沢を楽にしてあげたいからだよ』
え……と、思いがけないこずえの言葉に伊沢は戸惑う。
『こういうことはね、さっさと吐き出した方がいいの。一人で抱えてると、時間が経てば経つほど辛くなるからね。誰かにワーッて話してスッキリした方がいいよ』
「へえー、なんか説得力あるな」
『だって、経験者だもん。それもちょうど、つい先日のこと』
ん?と伊沢は首をかしげる。
「こずえ、失恋したのか? つい最近」
『そうなのよーーー!!』
いきなり大声で叫ばれ、伊沢は思わずスマートフォンから耳を離す。
「おまっ、声デカすぎ!」
『これが冷静に話せますかってーのよ! しかも、あんたんとこの整備士よ? つき合って1年も経ってないのに、そちらさんのおきれいなCAさんとつき合うことにしたんだとさ! まったくもう、どういう社員教育してんのよ、あんたの会社は!!』
ははは!と思わず伊沢は笑う。
『なにがおかしいのよ!?』
「いや、ごめん。豪快だなーと思ってさ」
『は? あんたそれ、失恋したてのか弱い乙女に言うセリフか?』
「だってお前、『そうかそうか、それは辛かったなー』なんて慰めてもらいたくないだろ? ビールでもガーッて飲んで、バーッとしゃべって、バタンッて寝て忘れるタイプだろ?」
『ちょっと!! あんたこそ傷口に塩塗りたくってるじゃないのよ!』
伊沢が更におかしそうに笑うと、こずえはふっと息をついた。
【こずえー、今時間あるか?】
帰宅してからもなにも手につかずにぼーっとしていた伊沢は、やり切れずこずえにメッセージを送る。
すると、すぐさま電話がかかってきた。
『どしたー? 伊沢』
「うん、あのさ。恵真からなにか連絡あった?」
『ないよ。伊沢は? あれから恵真と話せたの?』
「いや、まったく。だけど分かった、恵真の気持ちが」
『え?」
こずえはしばらく黙り込む。
伊沢も同じように口を閉ざした。
沈黙が続く中、やがてポツリとこずえが呟く。
『諦めるの? 恵真のこと』
「ああ」
『出来るの? 伊沢」
「出来そうにない。でも、そうするしかない」
『そっか』
しばらく考えてから、こずえは明るく言った。
『よし、聞こうじゃない。なんでも話しな? 伊沢の気持ち、ぶちまけたらいいよ』
「なんだよそれ。なにをぶちまけんの?」
『だから、なんでも! 恵真を諦めようって思った時のこととか』
「えー、傷口に塩塗るな、お前」
『違うよ! 伊沢を楽にしてあげたいからだよ』
え……と、思いがけないこずえの言葉に伊沢は戸惑う。
『こういうことはね、さっさと吐き出した方がいいの。一人で抱えてると、時間が経てば経つほど辛くなるからね。誰かにワーッて話してスッキリした方がいいよ』
「へえー、なんか説得力あるな」
『だって、経験者だもん。それもちょうど、つい先日のこと』
ん?と伊沢は首をかしげる。
「こずえ、失恋したのか? つい最近」
『そうなのよーーー!!』
いきなり大声で叫ばれ、伊沢は思わずスマートフォンから耳を離す。
「おまっ、声デカすぎ!」
『これが冷静に話せますかってーのよ! しかも、あんたんとこの整備士よ? つき合って1年も経ってないのに、そちらさんのおきれいなCAさんとつき合うことにしたんだとさ! まったくもう、どういう社員教育してんのよ、あんたの会社は!!』
ははは!と思わず伊沢は笑う。
『なにがおかしいのよ!?』
「いや、ごめん。豪快だなーと思ってさ」
『は? あんたそれ、失恋したてのか弱い乙女に言うセリフか?』
「だってお前、『そうかそうか、それは辛かったなー』なんて慰めてもらいたくないだろ? ビールでもガーッて飲んで、バーッとしゃべって、バタンッて寝て忘れるタイプだろ?」
『ちょっと!! あんたこそ傷口に塩塗りたくってるじゃないのよ!』
伊沢が更におかしそうに笑うと、こずえはふっと息をついた。



