Good day !【書籍化】

『なあ、こずえ。俺、どうしたらいいと思う?』
「それ、恵真にも聞かれた。私、板挟みなんだけど」
『そっか、ごめん。恵真にはなんて言ったんだ?』
「んー、まあ……。伊沢に時間をあげてって、それだけ」
『そしたら?』
「分かったって。心細いけど、伊沢に頼らず一人でがんばるってさ」

恵真……と呟く伊沢に、こずえは思わず笑う。

「あんた今、キュンとしたでしょ?」
『してねーよ!』
「あはは! そんなムキになって否定しなくてもいいってば。もうさっさと告白しなよ。それがいいと思うよ?」
『……でも、絶対フラれるだろ?』
「まあ、多分ね」
『おい! そこは嘘でもいいから否定しろよ』
「冗談だってば。分かんないよ? だって恵真、ボロボロ泣いてたし。気づいたんじゃない? 当たり前だと思ってたあんたの存在が、どんなに大事かってことに。今なら頷くかもよ?」

え……と伊沢は考え込む。

『でもそんな、弱ってるところにつけ込むような真似は……』
「真面目か? あんた、恵真のこと言えんの? なにその優等生発言。あーもう! まどろっこしい! ガバッて抱きついて好きだって言えばいいだけでしょ? なんでそれが出来ないのよ?」
『おまっ、俺はこずえとは違うの! そんなこと出来るかよ』
「はあー? だったらもう知らないからね。いつまでもウジウジしてなさい!」
『え、いや、それは……』
「あんた一応パイロットでしょうが! 決断しなさい! なんならもう、海外ドラマみたいに無線でプロポーズしなさい!」
『バカ! そんなことしたらクビ飛ぶっつーの!』
「だったら地上で抱きつきなさい! その方がマシでしょ?」

はあ、と伊沢はため息をつく。

するとこずえは口調を変えた。

「伊沢、私マジであんたのことが心配だよ。もうこれ以上無理するのやめな? すぐにとは言わないけど、やっぱり恵真に気持ちを打ち明けた方がいいよ。あんたの為にもね」
『……うん。そうだな、ありがとう。今まで自分一人で気持ち抱え込んでたから、聞いてもらっただけでも助かったよ』
「ま、話聞くくらいなら出来るからさ。いつでも電話してきな」
『分かった』
「なーんて、単にどうなったか知りたいだけだけどさ。進展あったら教えなさいよ?」
『ああ。分かった』
「じゃねー、Good Luck」
『サンキュー』

通話を終え、こずえはやれやれと肩をすくめる。

「まったくもう、ウブな真面目同士、お似合いっちゃお似合いだけどね」

そして心の中で、恵真と伊沢にエールを送った。