【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

社員が社長夫人になったせいで、一番扱いに困っているのは営業部長かもしれない。

心労を考えると申し訳ないと思うけれど、私だってこの仕事を辞めるつもりはない。

だから、周りには慣れてもらうしかないのだ。

 私だってやりにくいのだから、お互い様──そう思わないとやっていられない。

仕事を終えれば、大翔と一緒にディナー。

連れて行ってくれるのは、どれも一流の高級店ばかりで、とにかく美味しい。

家に戻れば、ハウスキーパーさんが掃除を済ませてくれているから、私はなにもしなくていい。

 ──こんなに贅沢な暮らしをしていいのだろうか。

そう思うけれど、大翔はとにかく私を甘やかしたがる。

おかげで私は駄目人間になってしまうのではないかと、ふと不安になることもある。

実家ではすべての家事を私が担ってきたことを知っているからこそ、大翔は「いかに私を何もさせずに過ごさせるか」を徹底しているのだろう。

たしかに家事は大変だったけれど、料理は嫌いじゃない。

ただ、いつも高級店の味に慣れている大翔に出せるほどの腕前はない。

──でも、いつか作って食べてもらいたいな。

お風呂から上がってリビングに行くと、ソファで書類と睨み合っている大翔の姿があった。