【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

 大翔との新婚生活は、想像していた以上に快適で、そして穏やかだった。

朝食は基本的に私の分だけを簡単に用意する。

その横で大翔は、驚くほど美味しいコーヒーを淹れてくれる。

世話好きで、私にとことん甘い。

まるで大切な一人娘を溺愛する父親のように、けれど適度な距離を保ちながら、そっと見守ってくれているのがわかる。

 高城さんが運転する車に乗って、二人並んで出勤。

結婚の事実はすでに社内中に知れ渡っていて、それまで陰口や嫌味を言ってきた女子社員たちは、急に優しくなった。

「お友達になってください」

なんて言われたときには、正直吐き気がした。

もちろん丁寧にお断りして、一匹オオカミを貫いている。

 佐伯さんは相変わらず容赦なく仕事を振ってきて、営業部長に注意されていた。

「捺美さんは社長夫人なんだから、仕事量を考えなさい」

 すると佐伯さんはきっぱり言い切った。

「そんなの関係ないですよ」

誰もが態度を変えていく中で、佐伯さんだけは以前と変わらずに接してくれる。

その厳しさが、今はありがたい。

佐伯さんの下で働けることを、本気で良かったと思った。

後日、そのことを営業部長に伝えると、「え、そうなの?」と困惑されたけれど、受け入れてくれた。