【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

「大翔で」

 社長──いや、大翔は、真顔でひーちゃん呼びを拒否した。

「え~、好きな呼び方でいいって言ったのに」

「本気でそっちを選ぶとは思わないだろ。会社で“ひーちゃん”呼びはまずい」

 嫌がっているのがわかるから、つい意地悪したくなる。

「じゃあ、二人きりのときだけにする」

「えぇ……」

大翔はあきらかに嫌そうな顔を浮かべるが、強く拒否はしない。

その反応がなんだか楽しい。

「ひーちゃん」

試しに呼んでみると、大翔はすごく照れくさい表情をした。

内心では不本意なのが伝わってくるのに、どこか満更でもなさそうで、余計におかしい。

「ひーちゃん、やっぱり嫌そうだね」

「家の中なら……ギリギリ許す。けど外では勘弁してくれ」

 頬を赤くしながらも、最大限の譲歩を示す大翔。

「いや、私も家の中はきついわ」

「は?」

「呼んでみて思ったけど、イタいよね。高校生カップルじゃあるまいし」

「……お前、俺で遊んだな?」

図星を突かれ、バレたという顔をしてしまう私。

大翔はじっと目を逸らさずに見つめてきた。

「いい性格してるな」

「ありがとう。褒め言葉として受け取っておく」

なんだか嫌な予感がして距離を取ろうとした瞬間、大翔はソファに置いてあったクッションをどけ、ぐっと距離を詰めてきた。