「あ~、疲れた」
式が終わり、ようやく帰宅した頃にはすっかり夜になっていた。
リビングのソファにもたれかかる。
社長が海外に行っていた間はひとりだったから、すっかり自分の家のように寛いでしまっている。
実家では自室以外で落ち着くことなんてできなかったから、この空間は驚くほど居心地がよかった。
「次は新婚旅行か?」
上機嫌な様子で、社長が隣に腰を下ろす。
ソファは大きいのに、なぜか妙に近い。
慌てて私は腰を浮かせて、ひとり分のスペースを空けるように距離を取った。
「なんのために?」
「どこにだって連れて行ってやる」
そのひと言に心が揺れる。
けれど──やっぱり新婚旅行なんて意味がわからない。
「私たち、契約結婚でしょ。おじい様が亡くなったら離婚する予定だし」
縁起でもないことを口にしたくはなかった。でも、言わずにはいられなかった。
こうやって一緒にいると、つい勘違いしてしまいそうになる。
好きになって、あとで傷つくのが怖い。
「……まだ怒ってるのか?」
社長が悲しそうに顔を曇らせる。
「そうじゃなくて!」
慌てて否定する。
(そうじゃなくて……離婚前提なのに、仲良くなったら余計につらいじゃない)
あの日のキスの意味を、私はいまだに聞けずにいる。
式が終わり、ようやく帰宅した頃にはすっかり夜になっていた。
リビングのソファにもたれかかる。
社長が海外に行っていた間はひとりだったから、すっかり自分の家のように寛いでしまっている。
実家では自室以外で落ち着くことなんてできなかったから、この空間は驚くほど居心地がよかった。
「次は新婚旅行か?」
上機嫌な様子で、社長が隣に腰を下ろす。
ソファは大きいのに、なぜか妙に近い。
慌てて私は腰を浮かせて、ひとり分のスペースを空けるように距離を取った。
「なんのために?」
「どこにだって連れて行ってやる」
そのひと言に心が揺れる。
けれど──やっぱり新婚旅行なんて意味がわからない。
「私たち、契約結婚でしょ。おじい様が亡くなったら離婚する予定だし」
縁起でもないことを口にしたくはなかった。でも、言わずにはいられなかった。
こうやって一緒にいると、つい勘違いしてしまいそうになる。
好きになって、あとで傷つくのが怖い。
「……まだ怒ってるのか?」
社長が悲しそうに顔を曇らせる。
「そうじゃなくて!」
慌てて否定する。
(そうじゃなくて……離婚前提なのに、仲良くなったら余計につらいじゃない)
あの日のキスの意味を、私はいまだに聞けずにいる。



