【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

「なにがあったの?」

 思わず問いかける。

「長くなるから、今度ゆっくり話す」

「結婚したら、二人でいる時間がたっぷりあるから?」

 そう言うと、社長は驚いたように目を見開いて、それから嬉しそうに微笑んだ。

「そうだ。会えなかった分、これからはたっぷり一緒にいられる」

 頬が熱くなり、私は恥ずかしそうに笑みをこぼす。

その瞬間、社長はゆっくりと近づいてきて、ヘアセットやウェディングドレスが崩れないように、そっと大切に抱きしめてくれた。

「ああ……生きてて良かった」

 心底安堵したような声。ああ、本当に命拾いしたんだ。

それなのに私は怒ってしまっていた。

申し訳なさと、どうしようもない愛しさが胸に込み上げる。

 契約結婚のはずなのに──なんだろう、この感情は。

離婚前提の、形だけの結婚式なのに──どうして私たちは恋人のように抱き合っているのだろう。

「今日は、楽しもうな」

「……うん」

理由はどうあれ、私たちの結婚式。

社長の言う通り、余計なことは考えずに楽しもうと思った。

 そして社長のおじい様も出席できて、無事にミッションは達成された。